泡茶探味
日々、茶をいれる。
日々、茶をいれる。
手を添え、湯を注ぎ、香りを聴き、味を探る。
それはただの所作だが、旅でもある。
「泡茶探味」では、毎回六大茶に焦点を当て、六大茶類それぞれの技法、香気、物語を探っていきます。
目的はただ美味しくいれるためだけではありません。
茶をいれることで、何を感じ、何が見えてくるのか──その深層を静かに掘り下げていく試みです。
このテーマで記事を始めることにしたのは、中国茶を含め茶自体を淹れることが難しい、特別な道具が必要だと思っていらっしゃる方がとても多いことに気付いたからです。
また、そうした日々の“探味”を、言葉でも記録したくなったからです。
マグカップとお湯だけでできます。簡単に淹れることも、難しく淹れることもできます。
茶を嗜む皆様に少しでも参考情報として泡茶の技法をお伝えできればと思います。
茶の世界
私は茶に惹かれ、その豊かな世界に身を置くようになりました。
茶は単なる飲み物ではなく、文化、時間、そして人との関係性の象徴です。
私は元技術職です。お茶は現実主義者が好む傾向にあり、味や品質には偶然はなく必然性しかありません。
しかしそのものを語るときには、理屈っぽくも、風情があり、時に意味深である必要がある。
なぜなら科学成分を説明するよりも自分が感じたことを言葉にする方が大事な世界であるからです。
全ては理屈の上でしかないが、理屈を積み重ねた先に生まれる身体化された知こそが感覚による所作を可能にします、
泡茶も武道と同じ、守破離(最初は型(理屈)を守り、やがて破り、最終的には離れて自由に動く)です。
その判断は「感覚的」に見えて、極めて論理的な反応の集合体です。
最も大事なのは素直であること。
他の意見に靡かず、自身の感じたことを素直に表現すること。
今後の内容の予告
〈今後の内容の予告〉
- 六大茶類ごとの泡茶技法
- 茶葉ごとの香気と温度の微細な変化
- 季節に合わせた茶の在り方
- 茶器の選び方とその哲学
- そして時々、茶にまつわる物語や歴史の断片
読んでくださる方が、ふと日常の中で茶を淹れてみたくなる。
そんな「静かな誘い」にもなればと願っています。
自由な世界には間違いがない
この香と味を追求する世界に失敗はあれど間違いはない。
誰もが、自分の感じた香り、揺れた記憶、沁みた温度について、自由に言葉を紡いでいい。
正解はない。だからこそ、誠実であれる。
ある人には静けさ、ある人には再会の味、ある人には花香、ある人には梅子香。
ある人にはただ喉を潤すだけのものかもしれない。
どんな語りも、その人だけの真実として、茶は静かに受け止めてくれる。
ひとつだけ、真実があるとすれば、理論と現実が食い違っているのなら、
常に間違っているのは理論の方だということだ。
まず知ってもらいたい、寒性温性
茶室をオープンして、まもなく1年。
日々お客様とお茶を飲みながら色々な話をする。
お茶の話から、関係のない話まで。
その中で何度も改めて思うことは、やはりまずは、寒性温性だけでも理解して飲んでほしいということ。
ある人は眠れないのに夜にジャスミン茶を飲む。
ある人は冷え性だからと夜に暖かい緑茶を飲む。
- 体質が冷えやすい人が寒性の茶(緑茶・青茶)で飲んだ後に冷え症状が悪化
- 夏場に温性の茶(紅茶・黒茶)を熱くして飲み、脱水症状、熱中症リスクの増加
- 夜にカフェインの強い寒性茶を飲み、不眠と体温の乱れが起きる
体質に合わない茶を長期的に飲み続けることで起きる慢性的な冷え、消化力低下、免疫力低下というのも実際にある。
泡茶の仕方を変えれば、カフェインを抑えることだってできる。
複雑な知識や所作は面倒だ。でもそこにはワンランク上の体調管理と美味しい世界がある。
語り手茶人:森 晓龙(せん しゃおろん)
語り手茶人:森 晓龙(せん しゃおろん)
お堅い仕事を辞職し、鉄の鎧を脱ぎ捨てて、
大したツテもなく中国に茶旅、茶修行にでかけ、
帰国した後2024.8に大阪に茶館「World Tree」を開店した茶人。
旅の中で風や人と語らいながら、いつか帰るべき場所を大陸の中で模索した。
茶の絶対なる基本である温寒性や、手間のかかる泡茶のティータイムが素晴らしい体験であることを広めたい。
中国で小龙(シャオロン)と呼ばれすぎて、シャオロン以外で反応できないのでニックネームも晓龙(シャオロン)に自名したが全く浸透しないことが悩み。